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第9-1話 違和感①

Author: 月歌
last update Last Updated: 2025-12-15 19:52:53

蓮くんと付き合い始めて、二週間が経った。

毎日LINEが来る。

おはよう、おやすみ。

今何してる?

誰といる?

最初は嬉しかった。

推しが、恋人になった。

夢みたいだ。

でも——

少しずつ、違和感が芽生え始めた。

ある日、会社の同僚と飲みに行った。

久しぶりに楽しい時間を過ごして、帰宅したのは午後十時。

スマホを見ると、LINEが十件以上来ていた。

蓮くんからだ。

『今どこ?』

『誰といるの?』

『返信ないけど、大丈夫?』

『美月さん?』

『心配です』

『電話出てください』

『なんで出ないんですか』

『美月さん、どこにいるんですか』

『連絡ください』

『美月さん』

最後のメッセージの時刻は、五分前。

慌てて返信を打ち込む。

『ごめんなさい、同僚と飲みに行ってました。今帰宅しました』

送信。

すぐに既読がつく。

そして、電話がかかってきた。

「もしもし」

『美月さん、大丈夫でしたか?』

蓮くんの声。

少し、焦ったような声。

「ごめんなさい、スマホ見てなくて……」

『誰と飲みに行ってたんですか?』

「会社の同僚です。女性二人で」

『……そうなんですね』

電話越しに、蓮くんが息をつく音が聞こえた。

『心配しました。連絡ないから』

「ごめんなさい……」

『次からは、出かける前に教えてもらえますか?』

「え?」

『美月さんがどこにいるのかわからないと、心配で仕事に集中できないんです』

その言葉に、少しだけ引っかかった。

「……わかりました」

『ありがとうございます。じゃあ、おやすみなさい』

電話が切れた。

スマホを見つめたまま、しばらく動けなかった。

——これって、普通?

次の日の夜、蓮くんから電話がかかってきた。

「もしもし」

『美月さん、今大丈夫ですか?』

「はい、大丈夫です」

『あの……お願いがあるんですけど』

「なんですか?」

『SNS、鍵垢にしてもらえませんか?』

「え?」

『美月さんのTwitter、鍵ついてないじゃないですか』

「……はい」

『誰でも見られるの、ちょっと嫌で』

「でも、私そんなに投稿してないですし……」

『それでも』

蓮くんの声が、少し強くなる。

『美月さんのこと、他の人に見られたくないんです』

心臓が、ドクンと跳ねた。

「……わかりました」

『ありがとうございます。じゃあ、明日空いてますか?』

「あ、明日は……友達と約束があって」

『友達?』
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